第7教室:『ベラミ』     (モーパッサン)

膝関節損傷で引退した元英語通訳ガイドが書いています.専門家ではないのであちこち間違いだらけかと思います.その点ご承知おきの上お読みいただければ幸いです.よろしくお願いいたします.

語学学習日記(フランス語学習)『ベラミ』    (49)(モーパッサン)


ベラミ(49)
Bel-Ami
 (1885)
by Guy de Maupassant


——————————【49】————————————————

 Il  fouillait  dans  sa  pensée  sans  parvenir  à  se  le
rappeler; puis,   tout  d' un  coup,   par  un  singulier
phénomène  de  mémoire,  le  même  homme  lui  appa-
rut,  moins  gros,  plus  jeune,  vêtu  d' un  uniforme  de
hussard.
   
 
..——————————(訳)—————————————————
 
 デュロワは思いめぐらせてみたが、この人物にたどり
着くことはできなかった.すると突然、奇妙な記憶現象
によって、この男と同じ人物が思い浮かんだ.それは軽
騎兵の軍服を纏ったもう少し痩せていて、もう少し若い
男の姿だった.                
 

 
——————————⦅語句⦆—————————————————
        
se rappeler:(pr) 覚えている、思い出す;
㋪:s'appeler  ~という名だ.[r の有無で意味が違う]
fouillait:(3単半過去) < fouiller (自) [dans の中を]
      探し回る、かき回す、
      fouiller dans ses poches / ポケットの中をさぐる
      fouiller dans sa mémoire / 記憶を探る        
pensée:(f) 考え、思い、心、思想;
      辞書には載っていなかったが、ここでの意味は
      「記憶」.意味は辞書の外にまで広がることがあ
      るので、辞書にあまり忠実過ぎるのも読解をさ
      またげる原因になるかもしれない.要注意. 
      訳すときは、辞書の定義とストーリー展開と、
      常識との3つのコンビネーションが大切です. 
parvenir:(自) (à に)達する
    parvenir à + 不定詞:(苦労して...に)成功する、
   やっと~できる         
tout d'un coup:突然    
singulier(ère):[サンギュリエ(エール](形) 奇妙な、風変わりな
phénomène:(m) 現象     
apparut:(3単単純過去) <apparaître (自) 現れる、
    出現する        
†hussard:[ユサール](m) 軽騎兵

 

学習番外日記:学習科目について

学習仲間各位

 

現在学習中のモーパッサンがいつの時代の人なのか

調べてみました.他の作家作品のフランス語も学習

していますので、過去に投げた科目や今後学習希望

の作家もついでに調べてみました.次の通りです.

カッコ内は『代表作』を書き入れました.

●は難しくて投げた科目

◉は今後学習してみたい科目

〇は現在学習中の科目

 

学習科目

スタンダール(1783-1842)『恋愛論
オノレ・ド・バルザック(1799-1854)『谷間の百合』◉
ヴィクトル・ユゴー(1802-1885)『レ・ミゼラブル』●
アレクサンドル・デュマ(ペール)(1803-1870)『モンテクリスト伯
プロスペル・メリメ(1803-1870)『カルメン』『コロンバ』◉
ジョルジュ・サンド(1804-1876)『愛の妖精』◉
ギュスターヴ・フローベール(1821-1880)『ボヴァリー夫人』◉
デュマ(フィス)(1825-1895)『椿姫』●
アルフォンス・ドーデ(1840-1897)『風車小屋だより』〇
エミール・ゾラ(1840-1902)『居酒屋』『ナナ』『獣人』〇
ギ・ド・モーパッサン(1850-1893)『女の一生』『ベラミ』〇
フランソワ・モーリヤック(1885-1971)『テレーズ・デスケイルー』◉
アラン・フルニエ(1886-1914)『さすらいの青春』〇
ジャン・アヌイ(1910-現在)『野性の女』●

 

ところでモーパッサンの代表作は『脂肪の塊』だとおっしゃる

先生方がおおいので、付け加えておきます.

また多くの先生方が、モーパッサンは短編にその魅力が

詰まっているといも言っておられます.

 

最近フローベールの『ボヴァリー夫人』も読んでいます.

モーパッサンの師匠だったそうです.師匠であり、お母さんの

友人であったともいわれております.「ジュール叔父さん」か

「椅子直しの女」の学習が終わったら、学習記事を投稿する

予定です.

 

 

フランス語会話のためには現代作家の作品を学習するほうが

間違いはないとは思うのですが、あいにく現代作家の作品は

難しくて過去に学習放棄しております.

 

学習放棄した現代作家作品一覧(がんばって復活するかもしれません)

青い自転車

青いマフラー

オルフェ

野性の女

 

語学学習日記(フランス語学習)『ベラミ』    (48)(モーパッサン)


ベラミ(48)
Bel-Ami
 (1885)
by Guy de Maupassant


——————————【48】————————————————

 Il  se  mit  à  le  suivre,  en  cherchant  dans  ses  sou-
venirs,  et  répétant  à  mi- voix: « Où  diable  ai- je  
connu  ce  particulier- là ? »

 
..——————————(訳)—————————————————
                 
 デュロワは、すれ違った人を追尾し始めた.記憶をた
どりながら、そして小さな声でこうくり返しながら:
 「あの者と一体どこかで知り合ったのだろうか?」

 

 
——————————⦅語句⦆—————————————————
          
souvenir:(m) 記憶力、思い出、回想
particulier(ère):(名) ① 個人、私人;
      ② [話] あいつ、あの人      
à mi-voix:(副句) 小声で   
diable:一体全体;  où diable / 一体どこで(へ)

 

 

語学学習日記(フランス語学習)『ベラミ』    (47)(モーパッサン)


ベラミ(47)
Bel-Ami
 (1885)
by Guy de Maupassant


——————————【47】————————————————

 Comme  il  arrivait  au  coin  de  la  place   de  
l' Opéra,  il  croisa  un  gros  jeune  homme,  dont  
il  se  rappela  vaguement  avoir  vu  la  tête  quel-
que  part.

 
..——————————(訳)—————————————————

  デュロワがオペラ座広場の角にさしかかったとき、
どこかの背の高い青年が来るのに差し掛かった.デュ
ロワはどこかその顔にうっすらと見覚えがあった.

 
——————————⦅語句⦆—————————————————
          
coin:(m) かど、街角      
croisa:(3単単純過去) < croiser [クルワゼ](他) すれ違う    
se rappela:(3単単純過去) < se rappeler de + 不定
   ~するのを覚えている、忘れない
   本文は複合不定詞で、「~したのを覚えている」       
quelque part:どこかで、どこかに;
   本文では動詞修飾ではなく直前のtêteを形容する.    
tête:(f) ここでは「顔」 

語学学習日記(フランス語学習)『ベラミ』    (46)(モーパッサン)


ベラミ(46)
Bel-Ami
 (1885)
by Guy de Maupassant


——————————【46】————————————————

 Il  passa: « J' irai  jusqu' à  la  Madeleine,  se  dit- il,
je  reviendrai  tout  doucement. »

 
..——————————(訳)—————————————————

  彼は通過した.「マドレーヌ広場まで行こう」と彼は
思った. 「それからまたゆっくりと戻ってくればいい
じゃないか.」


 
——————————⦅語句⦆—————————————————
      
passa:(3単単純過去) < passer (自) 通過する
reviendrai:(直現1単) < revenir (自) 戻って来る
doucement:(副)  ゆっくり、そろそろと

 

——————————≪感想≫ —————————————

passer に手こずりました.文脈からは「思う」「考える」
という意味だろうと、推量できるのですが、辞書には、
その意味が載っていません.たとえば、警察がこのひと
が犯人だろうと思っても、証拠がないから逮捕できない
ような状況です.
 訳本をみました.岩波文庫「ベラミ」では「考えた」
となっていました.まずは「考える」に1票獲得.
しかし新潮世界文学22では「歩き出した」.おそらく
「se dit-il」がすでに「考えた」なのでpasser を「移動す
る」にしたのでしょう.

 

語学学習日記(フランス語学習)『ベラミ』    (45)(モーパッサン)


ベラミ(45)
Bel-Ami
 (1885)
by Guy de Maupassant


——————————【45】————————————————

 Il  était  neuf  heures  un  quart.  Il  se  connaissait:
dès  que  le  verre  plein  de  bière  serait  devant  lui,
il  l' avalerait.   Que  ferait- il  ensuite,  jusqu' a  onze
heures ?

 
..——————————(訳)—————————————————

  9時15分だった.デュロワは自分の性向はわかって
いた.ビールがなみなみと自分の前で注がれると、間
違いなく一気に飲み干すだろう.それから11時まで
どうする?

 
——————————⦅語句⦆—————————————————
   
avalerait:[アヴァルレ](条件法3単) <avaler (他) 飲み込む、
   食べる、飲み干す 
      Il a avalé son verre de bière d'un trait.
      彼はコップのビールを一気に飲み干した.  


——————————≪文法≫—————————————————

今回の学習の眼目はこの文.
dès que le verre plein de bière serait devant lui,
il l'avalerait. 
コップ満杯のビールが彼の眼前に出されるや否や
彼は飲み干してしまうだろう.

条件法が使われています.なぜか?それは
前半dès que le verre plein de bière serait devant lui,
この部分が条件節と同じ働きをしているからです.
彼の前にビールがあったとしたら、

il l'avalerait. / 彼はそれを飲み干してしまうだろう.
これは単純未来ではだめなのか?だめです.単純未来
だとdès que le verre plein de bière sera devant lui,
il l'avalera. 彼の前にビールがくると、すぐさま彼は
それを飲むだろう.

これには「飲んでしまって後悔する」ニュアンスが
含まれません.「~になってしまうだろう」という
ニュアンスを作るには、やはり条件法が相応しいでし
ょう.

 

語学学習日記(フランス語学習)『ベラミ』    (44)(モーパッサン)


ベラミ(44)
Bel-Ami
 (1885)
by Guy de Maupassant


——————————【44】————————————————

 Avant  de  se  décider,  il  regarda  l' heure  aux  hor-
loges  lumineuses,  au  milieu  de  la  chaussée.
 
..——————————(訳)—————————————————

  どうするか決める前にデュロワは道路分離帯の夜光
大時計の時間を見た. 


——————————⦅語句⦆—————————————————
   
horloge:(f) 大時計
chaussée:(f) 車道
au milieu de ~:~の真ん中に
     horloge au milieu de la chaussée
    車道の真ん中の大時計
    車道の真ん中に大時計があれば車が走れません.
    恐らく中央分離帯に柱状に立っているのでしょう.
    本文は複数ですので、幾つかがあったということ.
lumineux(se):(形) 光る、明るい